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パラグライダーとは

 パラグライダーは柔軟翼を特徴とした飛行用具です。パイロットはハーネスに着座した状態で滑空します。キャノピー後縁左右に繋がれたコントロールコードを操作して操縦します。総重量は約20kgで一人で簡単に持ち運ぶこともできます。
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 パイロットは、風に正対して翼を地面に広げ、向い風で翼の中に風を入れて翼を形成すると共に頭上に上げ、 滑空状態にしてから離陸します。
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 パラグライダーは動力を持たないので無風状態では滑空しながら徐々に降下していきます。 速度範囲は20km/hから60km/h程度で、巡航速度36km/h程度における降下速度は1m/s程度です。 しかし、上昇気流を利用することにより、雲のように高く舞い上がったり、何時間も遠くまで飛ぶこともできます。
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 着陸する時は、向かい風で着陸場に進入し、接地直前にコントロールコードを引いてフレア操作を行って、 パイロット自身の足で着陸します。
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 日本では、着陸装置を持たないパラグライダーは航空法上の航空機ではないため、 操縦資格について航空法上の規制はありませんが、 フライヤー団体である公益社団法人日本ハング・パラグライディング連盟は、 パイロット自身と第三者の安全を確保するために技能検定制度を実施すると共に、 トラフィックルールやフライトマナーの啓蒙活動を行っています。
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パラグライダーの道具

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 これら全てが必須というわけではありませんが、多くのパイロットが持っているアイテムです。

パラグライダーの歴史

 1964年のアメリカで前縁を開口し後縁を閉じた複数のセルで翼を形成するパラフォイルが発明されました。
 その後、パラフォイルはNASAで宇宙船回収用として研究されましたが実用には至りませんでした。
 1978年のフランス人登山家がパラフォイルで山を降下したのが最初のパラグライディングと言われています。 その後、登山の時の下山手段としてではなくスカイスポーツとして徐々に広まりました。
 1986年にパラグライダーが商業的に生産されるようになると急速に普及をはじめました。 日本で普及し始めたのもちょうどその頃でした。
 1986年に発売されたパラグライダーの性能は滑空比が3程度、最小沈下速度も3m/s程度ですから、 今のパラグライダーよりパラシュートに近く、滑空するというより降下するというのに近いものでした。
 それから10年間の進歩には目を見張るものがありました。今では滑空比が10を超えるものまであり、 あっという間に立派な滑空機へと変貌を遂げたと言っても過言ではありません。
 現在、パラグライダーは基本性能だけでなく、安全性や取扱性の向上が著しく、一部の冒険者達のためのものではなく、 普通の人達が生涯楽しむことのできるスカイレジャーとして発展を続けています。

パラグライダーの原理

 パラグライダーの基本的な飛行の原理は他の航空機とほとんど同じです。空気の中を前進する翼によって揚力を発生し、グライダーやパイロットを支えています。
 翼が揚力を発生するためには空気の中を前進しなければなりません。 飛行機はエンジンを使って推進力を作っていますが、エンジンの無いパラグライダーは重力によって推進力を得ています。
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 パラグライダーの操縦の原理も他の航空機と同じです。翼全体を傾けることによって揚力が重力と遠心力につり合うように旋回します。
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 ところが翼を傾ける方法は、パラグライダーは飛行機など他の航空機とは大きく異なります。
 飛行機では翼の後縁にあるエルロンの一方を下げると、下げた方だけ翼の揚力が増加して、揚力が増加した方の翼が上がる方向にロールが生じます。
 パラグライダーでは、翼の後縁に繋いだコントロールコードの一方を引いて下げることにより、下げた方だけ翼の抗力が増加して、抗力の大きい方の翼が遅れる方向にヨーが生じます。その結果、先行する重心に引かれて遅れた方の翼が下がり、コントロールコードを下げた方の翼が下がる方向にバンクします。
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 翼の後縁を下げると揚力も抗力も共に増加しますが、飛行機では揚力増加が、パラグライダーでは抗力増加が支配的に影響します。飛行機はヨーに強くロールに弱い形状であるのに対し、パラグライダーはヨーに弱く(尾翼が無い)ロールに強い(重心が低い)形状であるために、このような違いが生じます。
 これは典型的な飛行と操縦の原理ですが、パラグライダーは柔軟翼であるため形状が複雑に変化します。 これを利用して様々に翼を変形させることによって様々な操縦ができます。
 一方で科学的な解析が非常に難しく開発にあたってはトライ&エラーによるところが大きいと言えます。
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